基本のキ・水泳の呼吸

水泳が苦手な理由に 、”呼吸が難しくて…” ”すぐ苦しくなっちゃうから…” 、と上げる初心者は少なくないでしょう。
なぜ苦しくなるかって?
それはね、吸い過ぎなんです。

陸上とは違う・水泳呼吸のルール

※ここでは、仰向けで泳ぐ背泳ぎは除いて考えてください。(←背泳ぎには背泳ぎの呼吸法があるみたいですが、こちらでは触れません)

水泳において、他のスポーツと圧倒的に違うのが、呼吸
水泳の呼吸(息継ぎ)は、次のサイクルから成り立っています。

  • 吐く
  • 吸う
  • 止める

陸上でのスポーツとは違い、吐く・吸うだけでなく止めるという動作が新たに加わるのです。
陸上で生活し慣れた私たちには馴染みのないこのサイクルに慣れないと、いつまでも水泳は上達しません。
《吐いて》《吸って》《止める》、まずはこの原則を頭に入れましょう。

息継ぎの鉄則

鼻から吐いて口で吸う
これが水泳の息継ぎの不変のルールです。
(中にはアーティスティックスイミングのようにノーズクリップを使用するかた( Tyler Clary のように)もいますが、少数派かと思います)

鼻で吐くのは、鼻から水が入るの(あの嫌な鼻ツーン)を防ぐため。
口で吸うのも、同様な理由です。
陸上であれば、鼻から吐こうが口から吐こうが、またどちらで吸おうが自由ですが、水泳ではそうはいきません。
それから、口で吸う理由がもうひとつ。
瞬間的に大量に空気を取り込めるから。
吸うときは一気に短時間で、これも鉄則です。
一気に肺を空気で満たして、準備万端、次の動きへの余裕を持つのです。
また肺が空気で満たされていれば最大限に浮力が効きます。
そう、沈みにくくするためにも、瞬間的な吸気きゅうきは重要なのです。

また、呼吸するとき頭を上げすぎるのはご法度です。
こちらで解説したように、頭を上げるほど脚が沈みます。
脚が沈めば抵抗が増し、スピードが上がりません。

頭を上げすぎず、一気に息を吸う。
脚の沈下を防ぐ基本ルールを徹底しましょう。

また息継ぎにおいては、『吐く量と吸う量のバランス』が非常に大事です。

呼吸は、実は吐くことが大事

いつも苦しくなってしまったり、息が続かなくて途中で立ってしまう人は、じつは『量を吐けていない』ことが多いです。
ついつい、水中で息ができない不安から吸い過ぎてしまっていませんか?
吸い過ぎると苦しくなります。
(ここで出ました、冒頭のキーワード『吸い過ぎ)

実験してみましょう。
※健康に不安のある方や異変を感じた場合、無理せずすぐに中止してください。場合によっては医師の診察も考慮してください。

いまここで呼吸しましょう。
その際、吐く量に対して吸う量を2倍、吐く:吸うを1:2で繰り返してみてください。
いっぱい吸っているはずなのに、やがて苦しくなってきませんか?
これには理由があります。

呼吸性アシドーシスとは?

二酸化炭素の排出が不十分だと、”呼吸性アシドーシス”という状態に陥ります。
この状態になると、息切れや呼吸困難を感じることがあります。さらには心拍数が増加することも。
つまり、しっかり息を吐けていないと『苦しくなるし、心臓のバクバクが助長される』のです。
(参照:呼吸性アシドーシス《MSDマニュアル》《ナース専科・看護用語集》)

『呼吸しているのに苦しい』→『もっと呼吸したい!!』→ 息を吸う一方いっぽう → さらに苦しい

悪循環のループです。  

少し話は逸れますが、じつはこれ『ランニング』でも同じなんです。
ランニング中も苦しいあまり《吸おう 吸おう》と息を吸うことばかりに集中してしまうと、苦しさから抜け出せないことがあります。
そういう時はあえて、一度深く息を吐いて胸と背中の辺りを落ち着かせると、スッと呼吸が楽になり、気持ちも落ち着くことができます。

陸上でも水中でも、しっかり息を吐くことは体と心の両方を落ち着かせる、重要な要素なんですね。
吸ったら、同じ分だけしっかり吐く、徹底しましょう。

息を吐いたら沈むんじゃないの?

この解説のように、肺を空気で満たしていれば体は自然に浮きます。
とはいえギリギリのバランスで浮いていますから、息を吐けば沈んでいきます。
その浮くか沈むかのギリギリラインを、練習によって見極めましょう。

やり方はシンプルです。
プールで蹴伸びをします。
はじめに目一杯空気を吸い込んで、壁を蹴って蹴伸び。
蹴伸びのやり方はこちら↓で確認してください。

次にそこから、少しずつ息を吐いていきましょう。
鼻からブクブクと。
一定量を超えると、浮いていた脚が沈み始めるはずです。
さらに息を吐き続けると、胴体も水面下に沈んでいきます。

このとき確認したいのが、脚が沈み始めるポイント。
脚が沈むと水の抵抗を受けてしまいます。
つまり、脚が沈み始める直前が、吐ける息のギリギリラインです。
何度も練習して、あなたの吐いてもいい息の量を把握しましょう。

『息を止める』に慣れる

繰り返しになりますが、水泳の呼吸は《吐く》《吸う》《止める》の3動作。
この《止める》に慣れなければいけません。
顔をお湯につけてお風呂で練習するもよし、実際にプールで練習するもよし。
ただし…

日常を練習に…水泳呼吸のトレーニング法

プールで練習する場合、水の中という馴染みのない環境と水泳特有の呼吸、その両方にいっぺんに慣れるというのはハードルが高すぎるのではないでしょうか。

水泳呼吸に慣れる、まずはそこだけに集中してみましょう。
おすすめは、陸上で実際に運動しながら

走りながらとか自転車漕ぎながらとか、心拍数を上げて、泳いでいるのをシミュレートすると、より現実に近い呼吸の感覚が得られるでしょう。
安静時だといくらでも息を止めていられるし、そこまでハアハア苦しくなることもないでしょうが、運動時ならば泳いでるのに近い心拍数や呼吸の苦しさも再現できます。

走りながら、『フンッ・スゥッ・ンッ』と《吐いて・吸って・止める》の呼吸をしてみましょう。
鼻から勢いよく吐いて、一気に口で吸いこみ、フッと止める。

これ、なかなか面白い経験ができますよ。
普通、走るときには『フウゥー』『スウゥー』と、それぞれ《吐く》《吸う》のなかでもデクレッシェンド気味に、尻すぼまりに強弱がつきますが、水泳呼吸法では強弱が一定、各動作が常にフォルテ(あるいはフォルテッシモ)。
そしてそこに、《止める》のアクションが加わる。
まさに呼吸を制限された水泳に近い呼吸の負荷が味わえます。

走る速度を上げれば、当然呼吸は苦しく/ペースも早くなるし、下げれば息も楽に/ゆっくりペースの呼吸で辛くもなく。
そんななかで、「これぐらいの心拍感・体力感だったらこのぐらいの呼吸量で足りる」を確かめることができます。
陸上でこれを身に付けておくと、いざ泳ぐときに心のゆとりが持てます。

また、敢えて呼吸を飛ばしてみる実験もしてみましょう。
水泳時に一回呼吸をしくじって息を吸えなかったシミュレーションです。

『フンッ・スゥッ・ンッ』を規則正しく3回くり返すところを、
『フンッ・スゥッ・ンッ』『ンッーーーーーーーッ』『フンッ・スゥッ・ンッ』って感じです。
実際やってみると、一回呼吸を飛ばすぐらいどうってことない、いくらでもリカバリーできる、って気付くはずです。
そうなんです、慌てなくても修正可能なんですよ、一回の呼吸ぐらい
水中だと一気に不安が襲ってきて、思わず足を着きかねませんが、陸上で『大丈夫なんだ!』を経験しておくと、焦らずに済みます。

『1回ぐらい呼吸に失敗しても大丈夫』な安心感醸成呼吸飛ばしは非常に有効だと思います。

まとめ

これまで説明してきた内容をまとめます。

水泳の呼吸は、陸上の呼吸とは異なり、吐く・吸う・止めるの3つの動作。

具体的な呼吸のポイントは以下の通りです。

  • 鼻から吐いて口で吸う: 鼻に水が入るのを防ぎ、口で効率的に空気を吸い込みます。
  • 頭を上げすぎない: 脚が沈み、抵抗が増えるため。
  • 吐く量と吸う量のバランス: 吸いすぎると苦しくなるので、吐く量も意識しましょう。
  • 呼吸を止める: 『止める』という動作に慣れましょう。
  • 陸上で練習: 走りながら呼吸の練習をすることで、水泳呼吸の感覚を疑似体験しましょう。
  • 呼吸を飛ばす練習: 呼吸が途切れても慌てない練習も重要です。

水泳の呼吸は単なる呼吸だけでなく、浮力とのバランスや、メンタル的な部分にも大きく関わっています。
プールだけじゃなく、陸上でも呼吸練習はできます。
焦らず落ち着いて水中での息継ぎができるように、日常生活のなかでぜひ試してみてください。

 

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