バタ足の基本と水泳における役割
バタ足は水泳の基本動作の一つであり、特にクロールや背泳ぎで重要な役割を果たします。正しいバタ足は、十分な推進力を生むのと同時に、脚が沈むのを防いでくれる、水泳に欠かすことのできない必須の要素です。水の抵抗を減らし、効率的に推進力を生むためには、正しいフォームと動きが必要です。自宅での練習を通じて、基礎を固め、スムーズなバタ足を習得しましょう。
”正しくない”バタ足とは
正しいバタ足をイメージする上で参考になるのが、「イルカ」です。

彼らは、胴体から全身を使って、しなやかに尾びれのさきの先まで、推進力を効率よく伝えます。
逆に言えば、正しくないバタ足とは、足先だけでキックしてしまうことや、動きの硬いキックがこれに当たります。すなわち、ひざ下だけでのキックや膝を真っすぐ伸ばしたままのキックのことです。
また、膝を曲げすぎるのも水の抵抗を過剰にうけるので、適切なバタ足とは言えません。
自分が誤ったバタ足をしていないか、どういうバタ足が理想なのか、まずは確認しておきましょう。
自宅練習の利点とは?
自宅で練習することにより、プールに行かなくても基本の動きを身につけることができます。特に初心者や子供は、他人の目を気にせずリラックスしながら練習できるため、習得しやすくなります。
また、バタ足の練習は年齢を問わず可能です。大人は筋力トレーニングを交えた練習を、子供は遊びを取り入れながら楽しみながら練習すると効果的です。
バタ足上達のためのコツ
バタ足を速くするためには
バタ足のスピードを向上させるには、大きな筋肉を動員することが効果的です。一般的には太ももを意識したり、「脚の付け根から動かす」などと言われますが、太ももの筋肉に頼ると、意外とすぐに疲れてしまいます。また「脚の付け根」と言われても、なかなかイメージしづらいのではないでしょうか?バタ足で活用するべき筋肉、それは腸腰筋です。どうすれば腸腰筋を使えるか、練習して感覚を掴みましょう。

また、足首の柔軟性を上げることも、無視できない重要なポイントです。
イルカを思い出してください。しなやかな尾びれの動きが強力な推進力を生みだします。私たちの足首もしなやかに動いてくれれば、それだけ力強く水を蹴りだし、強い推進力を発生させてくれます。
良い姿勢を保つための練習法
正しい姿勢を維持することで、水中での抵抗を減らし、効率的なバタ足を実現できます。理想のストリームラインを習得しましょう。
自宅でできるバタ足練習方法
足首の柔軟性を高めるストレッチ
まずはストレッチで、足首の可動域を広げましょう。足首が硬いと、しなやかなバタ足ができません。スムーズなバタ足をするためには、柔軟な足首を手に入れましょう。
- 正座をする
シンプルに正座をしてみましょう。スネと足首が心地よく伸びますね?
この時、親指は重ねるようにしてください。バタ足では、親指同士を当てるように(=内股ぎみで)キックします。この感覚に近づけるには、親指を重ねた正座が最適です。 - 正座+上体反らし
正座でまだ余裕な場合、体を後ろに反らせて、膝を浮かせてみましょう。
さらに強いストレッチが足首にかかります。無理のない範囲で伸ばしましょう。 - 椅子で片足正座
椅子の上で片足だけの正座です。上体を後ろに倒しましょう。片足ずつピンポイントで荷重させやすく、体重をコントロールすることで、無理なくストレッチできます。勉強中や仕事中にも行える、便利なストレッチです。
腸腰筋を使ったバタ足の練習法
前ももの筋肉を使ってキックすると、早々にバテてしまいます。腸腰筋を活用すべきだ、とすでにお伝えしました。
ではどうすれば、前ももでなく腸腰筋が使えるのか?
椅子に腰かけて練習してみましょう。
脚を浮かせて上半身を左右にひねってください。へそを支点に、上・下半身が呼応するように、それぞれ逆に揺れるはずです。このとき脚は、前ももではなく、腸腰筋で動かされています。実際、前ももに力みは感じられないはずです。
この感覚こそ、腸腰筋主導のバタ足です。
つまりバタ足練習とは、「一生懸命に太ももで蹴る」ことではなく、「いかに脱力して体を揺らすか」を体得することなのです。
脱力するからこそ、「膝から動かしてキックしなければ」(ひざ下キック/自転車こぎ)という意識も生まれないし、逆に「目いっぱい蹴らなければ」と膝を突っ張ったままのキックになることも、ありません。
子供向けバタ足練習法
「おへそを中心にして上半身を捻る」。子供が頭で理解するのは難しいかもしれませんね。
子供に教えるときは、椅子ではなく、まずは立った姿勢で、腕を振って全身を捻ることでつられて下半身も捻られること、を覚えさせるといいかもしれません。ラジオ体操第一の7番目(https://www.nhk.or.jp/program/radio-taisou/pdf/radio.pdf)の動きです。これを”でんでん太鼓”のように小刻みにスピーディーに行うと、バタ足の動きとリズム、適度な脱力感が、自然と身に付くでしょう。
ゲームや音楽に合わせてリズムよくバタ足練習をすることで、子供も楽しく練習できます。
次第に慣れてきたら、椅子での練習に移行すると、軸の安定したバタ足の習得につながるでしょう。
また、親がサポートしながら一緒に練習することで、子供も安心して取り組めます。椅子に腰かけ、肩を揺らして”おしりフリフリダンス”を親子で楽しむように、声をかけて遊びながら続けると効果的です。
バタ足が進まない時の対策
「どんなに頑張ってもなかなか前に進まない」「周りと比べると明らかに自分だけ進みが遅い」…
思うようにバタ足のスピードが上がらない要因を主に2つ上げます。
膝が曲がる・脚が沈む
膝が曲がってしまうと、効率的な推進力が得られません。なおかつ前から受ける水の抵抗も大きくなります。また体幹でからだを支えていないと、脚が沈みます。水泳の基本姿勢(ニュートラル姿勢)は、適度な体幹の力み・支えが原則です。お腹を完全に油断させないようにしましょう。
体幹の使い方は、世界一かんたん!蹴伸び(けのび)のコツでチェックしてください。
それから膝が曲がらないバタ足の方法は、”腸腰筋を使ったバタ足の練習法”で習得しましょう。
バタ足に必要な筋力がない
そもそも、バタ足に必要な筋肉が十分に足りてないことが考えられます。バタ足の効果を最大限に高めるために、脚の筋肉や体幹を鍛えるトレーニングを取り入れることが重要です。
ここまでは腸腰筋ばかり強調してきましたが、実はそれ以外にも「使うべき筋肉」があります。アップキック(蹴り下げた脚を水面に引き上げるキック)では裏もも(ハムストリングス)が、内股にするのには内転筋が、そしてブレない体幹を作るのには腹横筋や内・外腹斜筋が、有効です。
この全てに有効なトレーニングを一つご紹介します。
<フラッターキック>
その名の通り、仰向けで行うバタ足の動きです。
キーポイントは
- つま先を内向きに、内股にする
- 両手をバンザイする
内股・つま先を内向き、にすることで、内転筋(内もも)と腸腰筋が使えます。それから両手をバンザイすることでお腹が引き上げられるとともに引き締まり、腹筋群(腹横筋・内外腹斜筋)を刺激できます。
これを30回1セットで3セットやりましょう。
無理なくできるようになったら、100回1セットを目指してみてください。
バタ足の原理とその基礎知識
もっと詳しくバタ足について知りたい方は、こちらで詳しく解説していますのでご覧ください。
まとめ
自宅でバタ足を練習するのは、意外と簡単です。
椅子に腰かけて脚を浮かせ、体を左右にひねる、これだけでバタ足の基礎が身に付きます。
プールに行ったら、実際にプールに入る前にプールサイドで、練習してみるといいでしょう。
またプールで実践する際には、バリエーションを加えるとより楽しく練習できます。
普通のバタ足に加え、仰向けでのバタ足、さらにサイド(体を横向きにした)のバタ足。
(うつ伏せの)普通のバタ足とはまた違った感覚が味わえることでしょう。
捻るバタ足で、ぜひ苦手意識を克服してください。
<おまけ>プールのあの悩みの対処法を解説
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