一般人はおろか、長年競技に親しんだ水泳選手でも、コンバットサイドストロークを実際に泳いだことのある人は、ほぼ皆無ではないでしょうか?
未知の泳法を己のものにするために、段階を踏んで一歩づつステップアップし、ゴールに近づいていきましょう!
ここでは私が実践したオススメの練習法を6つご紹介します。ぜひ参考にしてください。
その前に、まず前提として確認しておきたいのが…
ステップ0.正しい蹴伸びの練習法

蹴伸び… 水泳の初歩であり基礎
とりあえず誰にでもできて、簡単に見えるけど、それでいてじつは奥深い蹴伸び
どんな泳ぎ方をするときも、まずは正しく蹴伸びができることが前提条件になります。
というのも、水泳で大事なキーポイントが《抵抗と浮力》
正しく蹴伸びができていれば、抵抗の少ない・浮力を最大限生かした泳ぎができます。
しかしそれができていないと、体力を消耗するばかりでなかなか前に進まない、非効率な泳ぎになってしまいます。
急がば回れ。まずは水泳の基本をしっかり身に付けましょう。
明らかにその後の上達に差が出ます。
とっても簡単 陸上でできる《正しい蹴伸び》の練習
1.まず床に仰向けに寝転がります。
2.そこから両手をゆっくり頭上に上げていき、手のひらを重ねます。
これだけです。
解説していきますね。
蹴伸びのコツは《顔の向き》と《体幹》
顔の向き… 水泳ビギナーを脱するには常につきまとう指摘ポイント
多くのビギナーは顔を上げ過ぎる傾向にあります。
なぜそれじゃダメなのか? そこには2つのデメリットがあります。
・顔を上げると水の抵抗が増す
・顔を上げると脚が沈む
顔を上げる(つまり頭を反らす)ほど、頭が背骨のラインからはみ出していきます。
難しく言うとこれは、前面投影面積が増すということです。
水の抵抗を減らすには、できるだけ前面投影面積を減らすことが必要です。
じつは脚が沈むことを避けたいのも同じ理由からです。
さてそこで仰向け寝の出番。
仰向けに寝ると、頭と背骨のラインが揃い、目線が真上に落ち着きます。
この姿勢が実は、前面投影面積が最小になる理想の姿勢です。
次にそこから両手を上げていくと…
お腹がへこんで力が入るのを感じませんか?
これが体幹にスイッチが入った状態です。
脚が沈んでしまうのは、頭が上がるのと同時に体幹で支えていないから、なんです。
初心者は知らないことだし、誰も教えてくれない真実なのですが、じつは泳ぐときの基本姿勢って常にお腹を絞っているんです。
この感覚を身に付けるのに、仰向け寝がベスト(だと私は思っています)。
この練習法を編み出してからは、ストリームライン(抵抗を最小限に抑えた理想の流線形)が劇的に改善しました。
何よりプールに行かなくても手軽に練習できるので気に入っています。
壁に背中をつけてやるのはダメなの?
床じゃなくても壁を使って同じような練習が出来そうですが、脚を脱力させるには壁だと不十分です。
力んでいるより脱力している方が浮きやすいです。
ぷっかり浮いた感覚を磨くには、床に寝る方が効率的です。
こちらでもう少し深く解説しています↓
ステップ1.手を体の横に沿わせたバタ足
ステップ0で身に付けた蹴伸びの応用編です。
ステップ1の動きはシンプル。腕は体の横につけて、バタ足で進みます。
この時に確認したいのが3点。顔の向きとストリームラインと効率的なバタ足。
1.顔の向き
ステップ0で練習した仰向け寝では目線は真上。
これをプールで実践すると目線は真っすぐプールの底を向くはず。
2.ストリームライン
顔の向きがOKなら、次はお腹。
ステップ0の両手を頭上に上げたときのお腹の絞り・体幹スイッチそのままで手は身体の横に。
理想のストリームラインを作れたら…次は
3.効率的なバタ足
バタ足の革命、『蹴らない!?バタ足の新常識』で疲れ知らずのスイスイ進むバタ足を実践しましょう。
ステップ2.サイドバランス
ステップ1をアレンジ。
片腕は頭上に真っすぐ伸ばし、片腕は体の横に添えたまま。そのままプールサイドを向いて横向きに泳ぎます。
このステップで気を付けたいのが頭を上げ過ぎないこと。
水を飲んじゃわないか心配なあまりに頭を持ち上げ過ぎると、脚が沈み抵抗が増してしまいます。
頭の高さは、片目は水中・片目は空中になるように。
口を”ひょっとこ”のように歪めれば、水は飲み込みにくくなります。大丈夫、慣れましょう。
しかしどうしても不安な方には裏技を。
顔を少し後ろ(足先)に向けてみてください。頭が水を遮る壁になり、呼吸しやすくなります。お試しを。
また、意識したいポイントがもうひとつ。
両手をおたがいにできるだけ離すように、伸ばし切ってください。
リードアーム(頭上に伸ばした手)は推進力ベースアップの鍵、またプルアーム(体側に添えた手)を伸ばし切るのは腕を最後まで掻き切る癖づけになります。
それから横向きでバタ足をし続けるサイドキックは、腹筋のコントロールも意識できていいトレーニングになりますよ。
ステップ3.サイドバランス&アームプル
ステップ2のサイドバランスをマスターしたら、腕の動きも加えてみましょう。
プルアーム(体側に添えた手)を前方に伸ばしていきますが、クロールのように水面上に上げず手は必ず体側を沿わせてください。手は脇腹から胸を撫でるようにタッチし続けたまま前に出します。
コンバットサイドストロークは視認性を抑えることを重視します。そのため肘は低く、腕時計の反射で気付かれないようにするため手首は常に水面下。また、腕を水から出さないことで水しぶきを抑えやすくなります。
こうして蹴伸び姿勢に戻ったら、クロールの動きでアームプル。
このステップは、サイドバランス姿勢からコンバットサイドストローク特有の腕の戻し(リリースからリカバリー)、アームプルに慣れる練習です。
ステップ4.サイドバランス&シザーキック
ステップ4はシザーキックに慣れるため練習です。
※ただし、これはシザーキックの完成形ではありません
後述しますが、全ての動きを統合すると、このシザーキックはまだ通過点です
ステップ2のサイドバランスのバタ足をシザーキックに変えます。
シザーキックの動きは…
・両足を膝を曲げ前後に開く(マリオジャンプのポーズ)
・膝を伸ばすと同時に両足を挟むように閉じる

この時、『上の脚が前、下の脚が後ろ』が鉄則です。
右半身が上側なら『右脚を前に出し、左脚をお尻側に引きます』。
シザーキックをひたすら繰り返し、慣れましょう。
ステップ5.蹴伸びからの『ステップ3と4』の融合
完成まであと一歩。
さあ、ここから複合技です。
手と脚の動きを組み合わせましょう。
蹴伸びからアームプルしてサイドバランスポジションに。
そこからのシザーキックで蹴伸びに戻る。
このとき、Ⓐ掻いた腕を戻しはじめる(体側を沿わせて)のと、シザーキックの両足を前後に開くのが同じぐらいなタイミングです。
そしてⒷ脇まで戻した腕をスイーっと前に投げ出す(リカバリー)のと、両膝を伸ばしながら閉じるのが同時な感じ。
さてここでステップ4の注釈に関して説明します。
このステップで初めて『シザーキック+体位変換』が融合します。
シザーキック+ローリングのほうが分かりやすいでしょうか。
じつはシザーキックとローリングが複合した場合、シザーキックの脚の軌道はそれまでとは変わります。開いて閉じる直線運動から、脚を閉じながらひねる《コークスクリュー》に変化します。
『①脚を閉じてから②身体を回転させる』のではなく、『閉じると同時にひねる』そのひねるエネルギーも推進力に変えるのです。船のスクリュー1みたいなものでしょうか。間違ってたらごめんなさい。
ステップ4で練習したシザーキックの動きを、ここへ来てもう一段階進化させます。
(このコークスクリューの動きに気付くまで、試行錯誤して苦労しました… 余談ですが)
さあここまで来たら、あとは上手にシザーキックと腕のリカバリーのタイミングを同調させましょう。
前述したⒷにコークスクリューが加わります。
タイミングよく決まると、《グーンッ》と気持ちよく加速しますよ。
ステップ6.リードアームのプル
いよいよ最終ステップ。
リードアーム(頭上に伸ばした手)を動かしましょう。
リードアームは平泳ぎのプルの動き。
1.蹴伸びスタートから 2.クロールの動きでプルアームを掻いてサイドポジションに 3.平泳ぎの動きでリードアームを胸までプル←今ココ
ここまでたどり着きました。
あとはキックのタイミングと合わせましょう。
3.のリードアームプルを始めると同時に脚を開きはじめます。
ここで復習です。
脚を開くのとプルアームを戻し始めるのは同じタイミング。
ここで3つの動きが融合します。
・プルアームを戻す ・リードアームでプル ・脚を開く
同時進行です。
そしてプルアームを脇まで引き上げるのとリードアームを胸まで掻き終わるのがほぼ同時。
この位置(胸)で両手が揃うので、一緒に前方へ《グーン》と伸ばします。平泳ぎのリカバリーと同じです。
同時に脚はコークスクリューで《ギューン》と推進力を爆発させます。
お疲れさまでした。
コンバットサイドストロークが完成しました。
と、言いたいところですが、『呼吸』について触れていません。
呼吸はまた別ページでお話しします。
<おまけ>プールのあの悩みの対処法を解説